交通事故の後遺障害逸失利益と定期金による賠償

交通事故の定期金賠償について

  令和2年7月9日、最高裁判所は、後遺障害の逸失利益について、定期金賠償を認める判決をしました。

  従前は、訴訟において、損害額を一括で請求していました。

  この最高裁判所の裁判例により、訴訟により、後遺障害の逸失利益を請求するにあたり、定期金賠償も選択肢となりました。

 

定期金賠償が問題となるポイント

  なぜ、後遺障害の逸失利益を請求するにあたり、定期金賠償が問題となるのでしょうか。

  従来、後遺障害逸失利益は、基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ計数により、計算されてきました。

  1年後に受け取る100万円と現在の100万円の経済的な価値は異なります。

  したがって、1年後に受け取る100万円の現在の価値は、100万円より少ないと考えられます。

  同様に2年後に受け取る100万円の現在の価値は、1年後に受け取る100万円より少ないと考えられます。

  実務では、労働能力喪失期間に対応するライプニッツ計数を用いることにより、今後失われる労働能力を現在の価値に金銭評価をします。

  そうすると、例えば、労働能力喪失期間が5年の場合、5年間に対応するライプニッツ計数は、4.5797です(令和2年4月1日以降に発生した交通事故の場合)。

  このライプニッツ計数は、年3パーセントで複利計算をした数字ですが、現在(令和2年12月)の金利状況からすると、リスクをとらずに、年3パーセントの複利で運用して、お金を増やすことは、通常、できないと考えられます。

  そうすると、後遺障害逸失利益を一括して請求すると、1年に1回、その都度、後遺障害逸失利益を受け取る場合よりも、少なくなる可能性があります。

  そこで、定期金賠償が問題となります。

 

最高裁判所の裁判例

  令和2年7月9日、最高裁判所は、「交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において、上記目的及び理念に照らして相当と認められるときは、同逸失利益は、定期金による賠償の対象となるものと解される。」旨判示して定期金賠償を認める判断をしました。

 

定期金賠償の問題点

  上記のように、最高裁判所の裁判例が出されましたが、実際に、常に定期金賠償を請求すれば良いかというと、必ずしもそのようには言い切れないと思います。

  現在(令和2年12月)の実務において、保険会社が一般的に定期金賠償を受け入れるかというと、通常は、受け入れないと思われます。

  被害者側が定期金賠償を求めた場合、裁判になる可能性が高いと思います。

  そうすると、後遺障害が重く、労働能力喪失期間が長く、過失相殺がない(被害者に過失がない)場合が、主に、定期金賠償を検討する事案になると思います。

  仮に、定期金賠償が認められた場合、将来、被害者の障害の状態によっては、加害者側から訴訟を提起される可能性もあると思います。

  定期金賠償を求めるか否かは、依頼する弁護士とよく相談をしたうえで、方針決定をされてはいかがでしょうか。


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