交通事故後によって重い後遺障害を負った被害者の方が、交通事故とは無関係な事情で死亡した場合、後遺障害逸失利益を請求することはできるのでしょうか?

1 はじめに

  交通事故で重傷を負い、重い後遺障害が残った被害者の方が、交通事故とは無関係な事情で死亡した場合、死亡後の後遺障害逸失利益を請求することができるのでしょうか。

2 問題の所在

  一見すると、交通事故と無関係な事情により死亡した場合、死亡後の後遺障害逸失利益は請求できないとも思われます。

  一方で、交通事故の被害者の方が、現実に後遺障害を負ったにもかかわらず、その後、偶然、交通事故と無関係の事情によって死亡したからといって、後遺障害逸失利益が請求できないとすると、損害の公平な負担という視点からは、相当でないとも考えられます。

3 裁判例

  最高裁判所は、「交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、いわゆる逸失利益の算定に当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、右交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではないと解するのが相当である。けだし、労働能力の一部喪失による損害は、交通事故の時に一定の内容のものとして発生しているのであるから、交通事故の後に生じた事由によってその内容に消長を来すものではなく、その逸失利益の額は、交通事故当時における被害者の年齢、職業、健康状態等の個別要素と平均稼働年数、平均余命等に関する統計資料から導かれる就労可能期間に基づいて算定すべきものであって、交通事故の後に被害者が死亡したことは、前記の特段の事情のない限り、就労可能期間の認定に当たって考慮すべきものとはいえないからである。また、交通事故の被害者が事故後にたまたま別の原因で死亡したことにより、賠償義務を負担する者がその義務の全部又は一部を免れ、他方被害者ないしその遺族が事故により生じた損害のてん補を受けることができなくなるというのでは、衡平の理念に反することになる」旨判示しています。

4 まとめ

  交通事故について、分からないことがありましたら、弁護士までご相談ください。

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