後遺障害(後遺症)逸失利益と中間利息の控除
質問
私は、自動車を運転し、信号のある交差点を青信号にしたがって直進していたところ、左方から来た自動車が赤信号を見落とし、交差点に進入し、衝突しました。
私は、整形外科に約8か月間通院し、いわゆる事前認定の手続きで、後遺障害別等級表別表第2の12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)と認定されました。
その後、私は、保険会社から示談の提示を受けました。
保険会社の示談の提示を見ると、示談の項目として、治療費、通院交通費、休業損害、傷害慰謝料、後遺障害(後遺症)慰謝料、後遺障害(後遺症)逸失利益という記載がありました。
後遺障害(後遺症)逸失利益の計算式として、交通事故の前年の私の年収に労働能力喪失率として14パーセント、労働能力喪失期間として、10年間のライプニッツ係数7.7217が記載されていました。
労働能力喪失期間が10年間であれば交通事故の前年の私の年収に0.14を掛けて、さらに10を掛ければ足りると思うのですが、なぜ、7.7217という数字になるのでしょうか。
弁護士からの回答
後遺障害(後遺症)の逸失利益を計算するにあたっては、将来の収入の減少を現在の一時金に算定するため、中間利息を控除する必要があります。10年後に受け取る10万円の現在の価値は、利息を考慮しなければならないので、10万円ではないと考えられます。
中間利息を控除する計算方法の一つが、ライプニッツ方式です。
「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」によれば、交通事故の逸失利益の算定における中間利息の控除方法については、特段の事情のない限り、年5分の割合によるライプニッツ方式を採用する旨が提言されました。
現時点(平成28年1月)では、私の個人的経験では、交通事故の訴訟や保険会社との示談交渉において、逸失利益における中間利息の控除にあたっては、年5分の割合によるライプニッツ方式を採用して計算することが通常であると思います。
なお、余談ですが、民法改正によって、現時点(平成28年1月)の民法404条が定める法定利率が年5分から変わると、逸失利益の金額も変わると考えられます。
例えば、同じ基礎収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間であることを前提として、年5分で計算した場合に比べ、年3分で計算した場合のほうが、逸失利益の金額が多くなります。
今後、民法改正にも注意が必要であると思います。
保険会社の提示した示談の金額について、分からないことがございましたら、弁護士までご相談ください。
弁護士 寺部光敏
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